スパイは自分の心の中にいる
──セルフコーチング × 心理学で「内なるブレーキ」を外す方法
はじめに:あなたを止めている“敵”は誰か?
戦時中にアメリカの諜報機関OSSが作成した『サボタージュ・マニュアル』は、敵を爆破するのではなく、内部から非効率を生み出して崩壊させるという極めて日常的な妨害法を記載していました。
しかしこの「敵」は、今の時代、他人ではなく、私たち自身の中に存在しています。
無意識の思考、過剰なルール、自分を縛る声。それこそが“内なるスパイ”です。
本記事では、心理学・コーチングの理論をもとに、自分自身を妨害する思考パターンに気づき、行動へと変えていくセルフコーチングの問いを紹介します。
そもそもサボタージュマニュアルの内容をまとめると
①常に否定的な態度や意見で提案を妨害
②規則、ルールを厳格にして柔軟な対応を妨げる
③過剰に監視し、自主性を奪う
④全体のことを考えず、自分の利益だけを優先する言葉行動心がけよ
⑤責任を回避せよ。自分のミスを他に押し付ける被害者意識で。
⑥何も決めるな。とにかく長時間の会議と話し合いを頻繁に実施せよ
⑦重要情報を学ぶ必要なし。ゴシップ情報積極的に収集、拡散せよ。
⑧意味は効果がありそうなものを避けて、とにかく自分ができそうなことを無計画に実施せよ
他の人にすることは厳禁。自分自身がしてないか気をつけて。
そしてこれらを自分自身にしていませんか?①~⑧に逆の言葉を自分自身に問いかけてみよう。
1. 「肯定的に考えて、やったらええやん」の心理的裏付け
● 心理学・コーチングでの説明
- 自己効力感(Self-Efficacy):自分ならできるという信念が、行動を後押しする(バンデューラ)
- 学習性楽観主義(Learned Optimism):問題を一時的・局所的にとらえることで回復力が高まる(セリグマン)
- リフレーミング:問題よりも「今何ができるか?」に視点を切り替える(コーチングの基本技術)
● 自分への問いかけ
- 今、心の中で「でも」「だって」と止めていない?
- 「どうしたらできる?」と問い直したら、何が見える?
- 最初の一歩は、どれくらい小さくてOK?
2. 自分に課している“見えないルール”に気づく
● 認知行動療法的アプローチ
- 多くの人が「~すべき」「~ねばならない」という認知のルールで自分を縛っています。
● 自分への問いかけ
- 最近、自分に「○○すべき」と命じた瞬間は?
- そのルールは、自分を守っている?それとも止めている?
- もし手放せるなら、何がもっと自由になる?
3. 自分を監視して縛っている“思考の見張り役”に気づく
● メタ認知と自己対話
- 自分の中にある「監視官」「内なる評価者」の声は、しばしば行動を制限します。
● 自分への問いかけ
- 自分にストップをかけてくる声は、どんなトーン?誰に似ている?
- その声と距離を取るには、どんな呼び名をつけるといい?
- それを“静かに見守るもう一人の自分”として対応できる?
4. 社会・コミュニティや未来の自分を意識する
● 長期視点と関係性意識
- 未来自己連続性:未来の自分を“今の自分”として感じることで行動が変わる
- ソーシャル・アイデンティティ:自分が所属する集団への意識がモチベーションを生む
● 自分への問いかけ
- 今日の選択は、3年後の自分にどう届く?
- この行動は、自分の周囲にどんな影響を与える?
- 未来の自分から「ありがとう」と言われる行動は何?
5. 当事者意識──自分の世界を“自分ごと”にする
● 心理的所有感・内的統制感
- 「自分がこの世界のオーナーである」という感覚が、責任ある選択と行動を生みます。
● 自分への問いかけ
- この出来事に対して「私は無関係」と思っていない?
- もし自分が“オーナー”なら、何を変えたい?
- 今日、自分と周囲を幸せにするために取れる一歩は?
6. 決めて生きる――後悔を防ぐための問い
● 後悔を先取りする決断力
- 予期的後悔理論:やらなかったことの後悔を想像することで、今の決断が促進される
- 実行意図:「○○が起きたら△△をする」という事前の約束が行動を後押し
● 自分への問いかけ
- 「何かあってからでは遅い」と思っていることは何?
- 「やらなかったら後悔する」と感じることは?
- 人生で大切にしたいTOP3は何? それを今日の行動にどう落とし込む?
7. 豊かな未来を創造するための「学び」と「手放し」
● ビジョンと選択の整理
- Growth Mindset:成長を前提に行動する心
- ビジョンワーク:理想の一日を描き、逆算して必要な学びと不要な習慣を洗い出す
● 自分への問いかけ
- 理想の未来に必要なスキルや知識は何?
- 今日から学び始められることは?
- もう手放していい「口ぐせ」や「習慣」は?
8. 意味ある行動を計画的に実行する
● GROWモデル×SMART目標
- Goal(目標)/Reality(現状)/Options(選択肢)/Will(実行)
- 明確で測定可能な行動計画を設け、振り返る
● 自分への問いかけ
- 半年後の理想の自分は、どこにいる?
- そこに向かうための今週のアクションは?
- それをいつ・どこで・どうやって確認する?
終わりに:問いは、自分の中の“スパイ”をあぶり出す
あなたの心の中には、「やめとけ」「失敗するかも」というブレーキ役が住んでいます。
でもそれは、あなたを守ってきた証でもあります。
その声を責めるのではなく、「ありがとう」と言って問い直してみる。
すると、あなたの中から“可能性の声”が聞こえてくるはずです。
今日の問い
「私は、私自身の行動を妨害するスパイに、どれだけ優しく問いかけているだろうか?」
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